竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 ルベリアに連れて行ってもらった店で、シェイラは金のバングルを購入した。悩みに悩んで選んだそれは、中央に青く透き通った石が埋め込まれている。色合いだけ見れば、イーヴの瞳と髪の色をあらわしているようにも思えるけれど、石の色はイーヴの髪よりももっと淡い青。それは、シェイラの瞳の色によく似ていた。

 イーヴにもらった、彼の鱗から作られたバングルはシェイラの宝物。だからシェイラもせめて自分の色を忍ばせたバングルを贈りたいと思ったのだ。

「いい買い物ができたわね」

「イーヴ、喜んでくれるかな」

「そりゃもう、大喜びするに決まってるわ。シェイラが来てからイーヴはね、すごく柔らかい表情を浮かべるようになったの。前は、泣く子をさらに泣かせる強面だったのにね」

 悪戯っぽく笑いながらそんなことを言うルベリアに、シェイラもつられて笑う。確かにイーヴの第一印象は怖い人だったけれど、今はもう彼がどれほど甘く優しい表情を浮かべるかをよく知っている。

「早く渡したいな」

 きっと、イーヴは笑ってシェイラの頭を撫でてくれるだろう。誰もいないところでなら、キスもしてもらえるかもしれない。想像して思わずふにゃりと頬を緩めたシェイラを見て、ルベリアも嬉しそうに微笑んだ。

「なら、急いで帰りましょう。こっちを通った方が近道だわ」

 そう言って、ルベリアはそれまで歩いていた道を右に曲がる。建物の裏手を通り過ぎて出た先は、左右にたくさんの店が立ち並ぶ大通り。買い物客でにぎわう中を突っ切っていくルベリアの背中を見失わないように、目を凝らしながら歩く。こんなにたくさんの人の中を歩くことなんて初めてで、うまく人波をかわせないシェイラはあちこちで人にぶつかってしまった。どうやら体格のいい竜族の人々にとって、小柄なシェイラの姿は視界に入りにくいらしい。

 ぶつかるたびに足を止めて謝りつつ人波をかき分けていくうちに、ルベリアの背中がどんどん遠くなる。
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