竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 すぐそばまでやってくると、ベルナデットは閉じた扇子の先でシェイラの顎を持ち上げた。強引に上を向かされることになって、シェイラは息苦しさに小さく呻いた。

「地味だけど、見てくれは悪くないわね。高く売れそう」

 そう言って笑うベルナデットの言葉の意味は分からないけれど、決して良い内容ではないだろう。扇子から逃れるようにシェイラが顔を逸らすと、その反抗的な態度が気に喰わなかったのか、ベルナデットは背後に控えた男にシェイラの身体を押さえつけるよう命じる。 

「じっとしていなさい。まったく、躾が必要ね」

 身動きのできないよう押さえつけられたシェイラに、ベルナデットは苛立った表情で扇子を振りかぶった。ばしりと鈍い音と共に、頬に衝撃が走る。一瞬遅れてじんじんと痛み出して、シェイラは顔を歪めた。

「おまえがイーヴ様の花嫁ですって? 冗談にしても笑えない話だわ」

 吐き捨てるように言うと、ベルナデットはシェイラの方に手を伸ばす。真っ赤な長い爪が近づいてくるのを見て、今度は何をされるのかと身体を硬くしていると、彼女の手は肩に落ちるシェイラの髪を払った。露出した首筋を検分するように指先が這い、いつその鋭い爪を肌に突き立てられるのかと恐ろしくてたまらない。
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