竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
――イーヴ、助けて……!



 心の中でそう叫んだ時、地響きと共に部屋の壁が崩壊した。

「きゃあぁっ!?」

 悲鳴を上げたベルナデットと共に、黒服の男が幾人か瓦礫となった壁と一緒に吹き飛ばされる。

 一体何が起きたのかと目を見開くシェイラの前には、青い竜。それがイーヴだと気づいた瞬間、彼は人の姿となってシェイラのもとに駆け寄ってきた。強く抱きしめられて、そのぬくもりに涙がこぼれ落ちる。

「シェイラ!」

「イーヴ……っ」

「大丈夫か? 何をされた?」

「大丈夫、イーヴが来てくれたから……」

 肌に感じるイーヴの体温に、心から安堵する。手早く縄を解いてくれたイーヴは、シェイラの身体を着ていた上着で包み込むと、再び強く抱きしめた。

「もう心配ない。すぐに帰ろう」

 シェイラを抱き上げたイーヴは、背後にいた黒い竜を見上げた。

「ルベリア、あとは任せる」

「了解。シェイラ、ごめんね。無事でよかったわ。ここはあたしがきっちりと片をつけるから、心配しないで」

 竜の姿をした彼女を見るのは初めてだけど、見つめる黒い瞳も声もルベリアのもので間違いない。逃げようともがくベルナデットを踏みつけながら、ルベリアは任せろというように片目をつぶった。
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