竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

竜族の国、ドレージア

 シェイラを背に乗せたイーヴは、大きな屋敷の庭に降り立った。

 ラグノリアの王城と同じほどではないかと思う大きさに、シェイラは目を丸くする。

 そっとシェイラを地面に降ろすと、イーヴの姿は竜から人へと変わる。小柄なシェイラからすると、イーヴはこの姿でも見上げるほどに背が高い。



 広い庭に大きな建物。色鮮やかなガラスの埋め込まれた柱がとても美しいけれど、ラグノリアとは全く雰囲気が違う。秋も深まり少し肌寒いほどの気候だった故郷とは違って、ここはとても暖かい。

 遠くまで来たことを急に実感して心細くなったシェイラは、身を守るようにイーヴに借りたマントをかき合わせた。



 このあとすぐに喰われるのだろうか。いきなり頭からがぶりといかれるのも嫌だけど、今から喰うと宣言されるのも嫌だなと、シェイラは騒ぐ心臓を落ち着かせるように深く長く息を吐く。

 それを見たイーヴが、眉間に皺を寄せたような気がした。

「こっちだ」

 イーヴがシェイラに短く声をかけて歩き出す。どうやらまだ喰われるわけではなさそうだ。

 脚の長さの違いだろうか、どんどん進んでいく彼に置いていかれないように、シェイラは小走りであとを追う。
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