竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「ま、待ってイーヴ様っ! どうしてそんな人間を……っ」

「この期に及んでよく喋るわねぇ。あんたの相手はあたしよ」

「わたくしの方が、あなたの花嫁に相応しいのにっ!」

 必死の形相で叫ぶベルナデットを見て、イーヴは冷たい一瞥をくれた。

「俺の花嫁は、俺が決める。相応しいかどうかなんて、他人のおまえが決めつけるな」

「……っでも、番いの証を刻んでいないということは、所詮それの寿命が尽きるまでの話なのでしょう。わたくし、あと数十年くらい待てますわ。ですから」

「残念ながら、あなたは黒竜一族から追放よ。違法な淫紋札の出どころが、まさかあなただったなんてね。ラグノリアの花嫁を娼館に売り飛ばそうとしたことも加えて長の怒りは凄まじいから、数百年は幽閉の身になることを覚悟しておくのね」

 呆れたような声で、ルベリアが踏みつける足に力を込める。信じられない、自分は悪くないと泣き叫ぶベルナデットはじたばたと暴れているものの、逃げ出すことはできないようだ。

「イーヴ、早く行って。シェイラをよろしくね」

「分かってる」

 まだ必死にイーヴの名前を呼び続けるベルナデットを無視して、彼はシェイラを抱いたまま外に出た。



 
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