竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 屋敷に戻ると、青い顔をしたレジスとエルフェに出迎えられた。シェイラの無事を確認して、彼らの表情が安堵で緩む。

 レジスにあたたかいお茶を淹れるよう命じると、イーヴはシェイラをそのまま部屋に連れて行った。そっとソファに座らされて、ようやく戻ってこられたと安心する。



「本当に……無事でよかった。ルベリアから、シェイラとはぐれたと聞いて、どんなに心配したか」

「怖かったけど……、イーヴが来てくれたから、本当に安心したの。ありがとう」

「シェイラを失うかと思ったら、怖くてたまらなかった。ベルナデットのことは、あとでしっかりと対処しておくが、もう二度と俺のそばから離れないでくれ」

 そう言って強く抱きしめられて、シェイラはうなずいて彼の背に手を回した。

 しばらくそうしていたあと、イーヴが腕を緩めてシェイラの顔をのぞき込む。

「本当に、何もされてないか? 頬が少し赤く見えるが」

「あ……ちょっと叩かれた、ので」

 その瞬間、イーヴの表情が怒りに染まる。腕に微かに残る縄のあとを撫でながら、彼は低く唸った。

「大丈夫です、もう痛みもないし」

「それでも……」

 怒りを抑えるように深く息を吐いて、イーヴはシェイラの身体を再び抱き寄せた。労わるように撫でたあと、そっと唇が頬に触れる。ほんのりあたたかく感じると同時に、何ともいえない心地良さが身体を包み込んだ。

「イーヴ?」

「……保護魔法を、かけたんだ。治癒はできないけど、シェイラを守れるように」

「えっ、そんなすごい魔法を私に!?」

 シェイラにとって竜族の保護魔法といえば、国の存続にかかわる重要なもの。それをシェイラ個人にかけてもらうなんて、恐れ多すぎる。

 思わず慄いて身体をのけぞらせると、イーヴはくすくすと笑いながらシェイラの手を引き寄せると、指先に口づけた。
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