竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

欲しいもの

 食事を終えたシェイラは、ソファに深く沈み込んだ。よく寝たせいか眠気は訪れそうにないので、読書でもしてゆっくり過ごすことにする。

 エルフェによると、昨日の件でイーヴは色々と対応に追われているらしい。ラグノリアから迎えた花嫁を攫った上に娼館に売り飛ばそうとするなど前代未聞で、ベルナデットは重い罰を受けることになるそうだ。それがどんなものなのかは教えてもらえなかったけれど、二度とシェイラには会わせないとエルフェが力強く約束してくれた。



 ぱらぱらと見るともなしに本のページを捲っていると、軽い音でドアが叩かれた。応答すると、心配そうな表情をしたルベリアがひょこりと顔をのぞかせた。

「シェイラ? 良かった、元気そうね」

「ルベリア!」

 駆け寄ってきたルベリアは、ぎゅうっとシェイラを抱き寄せた。その腕は、小さく震えている。

「本当にごめんなさい、シェイラ。あたしが目を離したりしなければ……ううん、ベルナデットに会った時点で帰っていたら良かったわ」

「大丈夫、ルベリアのせいじゃないわ。それに、買い物に連れて行ってくれたのはすごく楽しかったもの」

 答えながら、シェイラは購入したバングルをイーヴに渡しそびれていることに気づいて小さくため息をつく。自分の瞳の色を使ったバングルだなんて、想いを押しつけるような気がしてイーヴにこれを渡すことすら躊躇ってしまう。



「やっぱりまだ体調が悪い? ベッドで休みましょうか」

 シェイラのため息に気づいたのか、ルベリアが心配そうに首をかしげる。それに平気だと笑ってみせながら、シェイラは彼女の腕を掴んだ。

「あのね、ルベリアに聞きたいことがあって」

「何かしら。あたしに分かることなら、何でも聞いてちょうだい」

「番いの証って、ルベリアも知ってる?」

「えぇ、もちろんよ。生涯を共にする相手の首に刻む、最上級の誓いね。それがどうかした?」

 ルベリアの説明を聞いてシェイラはうつむく。しばらく言葉を探すように言い淀んだあと、思い切って顔を上げて自らの首を指し示した。
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