竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

番いの証

 イーヴが帰宅したという連絡を受けて、シェイラはルベリアに見送られながら彼の部屋へと向かった。

 大きな黒いドアの前で一度深呼吸をして、シェイラは少し震える手で二回ノックをした。すぐに応答があってドアが開き、イーヴが顔を出す。

「おかえりなさい、イーヴ。中に入ってもいいですか?」

「あぁ、ただいま。もちろんだ」

 抱き寄せられて額に軽く唇が触れたあと、シェイラは部屋の中へと招き入れられた。彼の部屋に漂う森林を思わせるしっとりとした緑の匂いは、少し速くなった鼓動を落ち着かせてくれるようだ。



「体調に問題はないか? 食事はちゃんと食べたか?」

「大丈夫。おかげさまで元気だし、しっかり食べました」

 相変わらず過保護なイーヴの言葉に笑いつつ、シェイラはソファに座った。

「ちょうど何か飲もうかと思ってたところだったんだ。シェイラも飲むか?」

「ううん、今夜はやめときます。できればイーヴにも、お酒を飲む前に聞いてほしい話があるんだけど」

「話?」

 お酒のボトルに伸ばしかけていたイーヴの手を止めるよに触れて、シェイラは上目遣いで微笑みかけた。そして彼の目の前に立った。
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