竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

 屋敷の中に入ると、年配の男性と若い女性の二人が慌てた様子で駆け寄ってきた。

「イーヴ様、戻られる前にご連絡をとお願いしておりましたのに」

 裾の長い上着を着た男性が困ったような表情でそう言うものの、イーヴは表情を変えずに肩をすくめる。

「連絡を入れるより、戻る方が早いと思ったんだ」

「こちらにも準備というものが……」

 ため息をつきつつ、男性はシェイラに向き直ると柔和な笑みを浮かべた。

「ようこそ、ラグノリアの花嫁様。わたくしはレジスと申します。この屋敷の執事をしております。花嫁様が心地良くお過ごしいただけるよう努めますので、どうぞよろしくお願いします」

 レジスと名乗った男は優雅な仕草で一礼すると、隣に立つ女性の背を押した。

「こちらはエルフェです。花嫁様の身の回りのお世話を担当させていただきます」

「エルフェです。よろしくお願いします、花嫁様」

 にこりと笑ったエルフェが、シェイラの手を握る。少し年上に見えるけれど、鼻の周りに散ったそばかすが可愛らしい印象を与える人だ。

「えっと、あの……シェイラと申します。よろしくお願い、します」

 ぺこりと頭を下げながらも、シェイラは彼らの対応に戸惑いを隠せずにいた。どう考えても暖かく歓迎されていて、これから喰われるとは思えない。本当に、シェイラはイーヴの花嫁として迎えられているのだろうか。
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