竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「私はね、何も持っていなかったの。身体ひとつでここに来て、本当にたくさんのものをもらったわ。こんなにも大切なものが増えるなんて、ラグノリアにいた時には思ってもみなかった」 

 片手でうつむいたイーヴの頰に触れると、彼はゆっくりと視線を上げた。不安に揺れる金の瞳を見つめて、シェイラは微笑む。

「そして私の一番大切なたったひとつは、間違いなくイーヴです。ずっとそばにいることを許してもらえるなら、私はあなたの唯一になりたい」

 はっきりと告げると、イーヴの顔が泣き出しそうに歪んだ。そのまま、強く抱き寄せられる。



「本気、なんだな。一度刻めば、もう二度と取り消すことはできない。それでもいいのか」

「いいって、ずっと言ってる」

 イーヴの背中に手を回して囁くと、抱きしめる腕が更に強くなった。同時に左の首筋に彼の唇が触れて、シェイラは小さく身体を震わせた。

「ここに、刻むことになる」

「分かったわ。覚悟はできてます、いつでもどうぞ」

 決意を込めて見上げたら、苦笑を浮かべたイーヴと目が合った。

「いっそ潔いほどに迷いがないな」

「だって、私にはイーヴしかいないから」

 笑顔でうなずくと、彼の指先が再び首筋を撫でた。目が合うと金の瞳が愛おしそうに細められて、それだけでうっとりするほどに幸せな気持ちになる。

「俺にも、シェイラだけだ。――だから」

 最終確認をするような視線にうなずくと、肩にかかった髪をそっと払ってイーヴがシェイラの左の首筋に触れた。指先が撫でるだけで肌が粟立つほどに敏感になっていて、シェイラはそれを堪えるようにイーヴの腕に強く掴まった。

「愛してる、シェイラ。俺の、唯一」

 囁いたイーヴが一度強く吸いついたあと、ゆっくりとシェイラの首筋に噛みついた。
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