竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 それはまるで空を翔ける竜のような形をしていて、シェイラは竜の姿の彼を思い浮かべる。人の姿のイーヴも、竜の姿のイーヴも、シェイラにとっては等しく愛しい存在。

 そっと指先でその痣を撫でると、彼がくすぐったそうに目を細めてシェイラを見た。

「どうした、シェイラ」

「あのね、ほらここに、痣が……」

「うん? あぁ、番いの証だな。シェイラのここにもちゃんと刻まれてる」

 イーヴが首筋を撫でて教えてくれるけれど、自分で見ることはできない。触れてみると、指先に少し違和感を覚えたので、それだろうか。

「見に行こうか」

 くすりと笑ったイーヴが、シェイラを抱き上げた。落ちないようにしっかりと彼の首筋に掴まって、二人は鏡のある浴室へと向かった。

 鏡の前で、イーヴはシェイラの首筋がよく見えるように身を乗り出した。



「ほら、見えるだろう」

「わぁ、本当……!」

 彼の言葉通り、首筋には青い痣があり、それは確かにイーヴの首筋にあるものと同じだった。

「それからほら、ここにも」

 囁いたイーヴが胸元を指さす。その指先を追って視線を向けると、胸の谷間のすぐ上あたりに、青く光る鱗が数枚浮き上がっていた。それはイーヴのものとよく似ていた。他の肌と同じように触れられた感覚があることから、ただ貼りつけたものではなく、シェイラの身体の一部であることが分かる。

「イーヴと、お揃いね」

 嬉しくなって彼の胸元の鱗に口づけると、優しく頭を撫でられた。 

「これでシェイラはもう、俺だけのものだ。ずっと離れないで」

「うん。イーヴも、ずっと私のそばにいてね。誰にも渡さないわ」

 独占欲の強い言葉に笑いながらうなずき、同じような言葉を返すと、返事のように強く抱きしめられた。
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