竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

私の幸せ

「準備はいいか、シェイラ」

「もちろんです」

「ちゃんと厚着してるか?」

「大丈夫ですってば」

 相変わらず過保護なイーヴの言葉に苦笑して、シェイラは羽織った外套のボタンをしっかりと閉めた。そして、目の前の青い竜の背中に軽やかに飛び乗った。

「しっかり掴まってろよ」

「はぁい。それでは、行ってきます!」

 見送りに来てくれたレジスとエルフェに手を振ると、イーヴがふわりと飛び上がった。たてがみに指を絡めて、シェイラはそっと頬ずりをする。この感触は、人の姿をしている時のイーヴの髪とよく似ている。



「帰りは、少し遠回りしてあの島で休んで帰ろうか」

「お花畑の島? それとも湖のある島?」

「どっちでもシェイラの好きな方でいい」

「じゃあ、早く帰れたらお花畑の方で、日が暮れる頃になったら、湖の島に行きたいな。湖面に星が映るところを見たいの」

「前に約束したもんな」

 小さく笑って、イーヴはまたぐんとスピードを上げる。

 二人が目指す先は、ラグノリア。国の保護魔法はまだ有効だろうけれど、妹のマリエルと話をしたくて里帰りをすることに決めたのだ。
< 186 / 202 >

この作品をシェア

pagetop