竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 雲を突っ切って、遥か下の方に見えてきたのは懐かしい故郷。離れてからまだほんの1年しか経っていないはずなのに、随分と久しぶりな気がする。

 国の中央にある広場には、青い杖を持つマリエルの姿が見えた。聖女の誕生日である今日は、祝いの儀式が行われているはずなのだ。

「シェイラ、大丈夫か? 無理はしなくても」

「平気。イーヴがそばにいてくれたら、私はいつだって安心できるもの」

 気遣うようなイーヴの声に首を振って、シェイラは笑う。そばにいてくれるイーヴの存在も、首に刻まれた番いの証も、胸元の鱗も、左腕のバングルも。どれもシェイラを守ってくれる。

「行くぞ」

 イーヴの声にうなずくと、竜はまっすぐに広場へと降り立った。突然あらわれた竜に人々がざわめき、その背にシェイラが乗っていることに気づいたマリエルが大きく目を見開くのが見えた。
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