竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「……お姉、様?」

「久しぶり、マリエル。元気そうでよかった」

 イーヴの背から降りたシェイラは、久しぶりに会う妹に抱きついた。驚きに見開かれていたマリエルの瞳にはみるみるうちに涙が溜まり、頬に流れ落ちる。

「お姉様、無事で……」

「うん。竜族の国で、良くしてもらってるわ」

「わたし、喰われてしまったかと、思って……」

 泣きじゃくる妹の背を撫でて、シェイラは大丈夫だと囁く。

「あのね。今日私がここに来たのは、ラグノリアを守る結界について話をしたかったからなの」

「結界に……?」

 まだ瞳に涙を溜めたまま怪訝な表情を浮かべるマリエルに、シェイラはうなずく。

 この先も生贄として育てられる子供が出ないように、このしきたり自体を無くしてしまいたいとシェイラは考えたのだ。

 竜族としてもラグノリアからの花嫁を求めているわけではないし、かつての恩を忘れない竜族は、この先もラグノリアを守ると決めている。

 それならば、シェイラがラグノリアに捧げられた最後の花嫁となればいい。

 ドレージアに来て初めて、シェイラはラグノリアでの扱いが酷いものであったことを知った。そのことを今更どうこう言うつもりはないけれど、同じような目に遭う子供がこの先出ることは望まないから。
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