竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 イーヴみたいに保護魔法を使うことはできないけれど、生まれてくる彼女の子供にありったけの幸せが降り注ぐことを願う。

「ラグノリアに、幸多からんことを」

 一年前にこの場でイーヴが言ったのと同じ言葉をつぶやいて、シェイラはくるりと踵を返すとイーヴの背に乗った。

「ありがとう、イーヴ。もう大丈夫」

 たてがみに顔を埋めて囁くと、返事をするように小さく鼻を鳴らしたイーヴがふわりと飛び上がった。

 聖女の誕生日に竜があらわれ、保護魔法のかかった鱗を与えられる。きっとマリエルは歴史に名を残す聖女になるだろうし、生贄を捧げる習慣も終わらせてくれるだろう。 

「お姉様……どうぞ、お元気で」

 まっすぐに見上げたマリエルの言葉に手を振ると、それを確認したようにイーヴが更に高度を上げて、妹の姿はあっという間に見えなくなった。
< 190 / 202 >

この作品をシェア

pagetop