竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!? ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「シェイラ様?」
中に入ろうとしないシェイラを見て、エルフェが戸惑ったように首をかしげる。
「ごめんなさい、あの……あまりに広くて立派なお部屋だったから」
「そりゃもう。ラグノリアからの花嫁様をお迎えするのに、張り切って準備したんですよ。調度品なんかは、ひとまずこちらで選ばせてもらいましたが、もし何かお好みがあれば教えてくださいね。すぐに取り寄せますから」
エルフェが、得意げな表情で胸を張る。青と金色が印象的に使われた部屋は、ラグノリアと雰囲気こそ違えど美しい。まるでイーヴの髪と瞳の色をあらわしているようだなと、シェイラは部屋の中をぼんやりと見渡した。
「ひとまずお着替えをしましょうか」
エルフェの言葉に、シェイラは自らの服を見下ろす。聖女の衣装によく似た白い服は、今までシェイラが身につけたものの中で一番上等なものだ。
だけどこの豪華な部屋の中では、それすらもみすぼらしく思えてくる。服につけられた装飾品だってがちゃがちゃと重たいばかりで、安っぽく見える。
そんなシェイラの心のうちなどエルフェが知るはずもなく、彼女は鼻歌混じりにシェイラを部屋の中へと促す。鮮やかな刺繍の施されたソファに座ると、驚くほどに柔らかな座面がシェイラの身体を包み込むように受け止めた。