竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「すごく、幸せな誕生日だったな。大好きな人にお祝いしてもらえるのがこんなに嬉しいなんて、知らなかった」 

「これからは毎年、たくさんお祝いしよう」

「うん。イーヴのお誕生日も、お祝いさせてね」

 振り返って見上げるとイーヴの金色の瞳が細められ、優しく唇が重ねられた。

「帰ったら、きっとルベリアも来てる。皆、シェイラの誕生日を祝いたくてうずうずしているはずだ」

「わ、嬉しいな。大好きな人たちと過ごせるのって、幸せ」

「俺の我儘で、日中はシェイラを独り占めさせてもらったからな。夕食は皆で食べよう」

「ふふ、我儘なんて。私も、イーヴと二人きりで過ごせて幸せでしたよ」

「夕食が終わったら、また二人きりで過ごそう。ベッドの上でもシェイラをお祝いしないといけないからな」

 艶めいた声で囁かれて、シェイラは笑ってうなずく。独占欲を隠そうとしないイーヴの発言が嬉しくてたまらない。

「たくさん、ぎゅってしてくれると嬉しいな」

 うしろから抱きしめたイーヴの腕に唇を押し当てながらつぶやくと、彼が驚いたように小さく息を吸うのが聞こえた。

「本当に……シェイラは俺の理性をどれだけ崩したいのか」

「だって、イーヴに抱きしめられるのも、くっつくのも、大好きなの」

「そんなこと言われたら、本気で寝かせてやれなくなる」

 肩を震わせて笑いながらも、冗談とも本気ともつかない口調でそう言ってイーヴはシェイラを抱き上げて立ち上がった。その拍子に、カップに挿していた花から光虫がふわふわと舞い上がった。

「最後に湖の上を一周してから帰ろうか」

「うん!」

 光虫の放つ淡い光に包まれながら、イーヴはシェイラの額にひとつキスを落とすと、竜に姿を変えた。
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