竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「いえ、そんなことは……! こちらでご用意した服が少々大きかっただけですわ。すぐに、サイズを合わせたものを作らせますので」

「そんなもったいないことは、必要ないです。だって、大きめの服だと長く着れるでしょう?」

「え……?」

 その言葉に、エルフェは戸惑ったように瞬きを繰り返した。分かりにくかっただろうかと、シェイラは更に説明しようと身を乗り出す。

「成長を見越してあらかじめ大きめの服を着ておくんです。最初は長い丈のワンピースとして着て、最後は上衣として着れば数年は着られます。だから、小さくて短期間しか着られない服よりも、大きめの服の方が経済的でいいんです」

「……今までずっと、そうして同じ服を長期間着ていたんですか?」

 少し低くなったエルフェの声に小さく首をかしげつつ、シェイラはうなずく。

「外に出ない私には、着飾るための服は必要ありませんでしたから」

「外に、出ない?」

 ますます声が低くなるエルフェに、シェイラはラグノリアでの生活を簡単に説明する。

 きっと竜族とは生活環境も違うだろうから、お互い知らないことも多いだろう。

 そう思って話した内容は、エルフェにとっては衝撃的だったらしい。先程までにこにこと微笑んでいたのに、その表情は暗く沈んでどこか怒っているように見える。



「生贄だなんて決めつけて部屋に閉じ込め、必要最低限以下の生活をさせるなんて……。ラグノリアは花嫁様になんて仕打ちを」

 酷すぎると震える声で吐き捨てるように言われて、シェイラは慌てて首を振る。自分のせいでラグノリアが悪く思われたら大変だ。

 もしも竜族が保護魔法をかけるのをやめてしまえば、ラグノリアはたちまち周囲の森が発する瘴気に飲み込まれてしまうだろう。

「あの、私は妹と違って聖女の力を持って生まれてこなかったんです。成人したら生贄となることが決まっていた身ですから、それまで外に出ないよう言いつけられていただけで、酷いことをされたとは思っていません」

「でも……」

 納得できないといった表情を浮かべるエルフェの腕を、シェイラは縋りつくように掴んだ。
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