竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「さぁ、食事にしよう」

 イーヴの合図で、テーブルの上には次々と料理が並べられていく。ラグノリアでも見たことのないようなご馳走の数々に、シェイラは驚いて目を瞬いた。

 中でも目を惹くのは中央に盛りつけられた大きな塊肉。

 こんがりと焼き色がついていて、食欲をそそるいい香りが漂ってくる。

「これ、私が食べていいんですか……?」

 思わずつぶやくと、イーヴが当たり前だとうなずいた。

「どれも美味いぞ。肉は嫌いか?」

「いえ、好きだと思います。……多分」

 シェイラの返答に、イーヴは訝しげに眉を顰めた。

「多分って何だ」

「あまり、食べたことがないんです。ラグノリアでは肉料理は、祭りの日と妹の誕生日に食べる特別なものだったから」

 マリエルの誕生日には、シェイラも部屋から出て家族で食卓を囲むことが多かった。年に一度のその日と、建国記念の祭りの日に食べる肉料理は、シェイラにとって幸せな記憶だ。正直なところ食事の味よりも、マリエルと小さく微笑み合った記憶の方が鮮明なので、肉料理が好きかと聞かれても分からないのだけど。

 そんな話を笑顔でしてみせたのに、イーヴは何故か苦い表情を浮かべている。今の話の何が良くなかっただろうかとシェイラは首をかしげた。
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