竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

生贄と花嫁のこと

 結局、半分ほど減らしてもらった肉を食べつつ、シェイラはイーヴに今までの生活について聞かれた。

 シェイラ自身は特に不便を感じていなかったラグノリアでの生活は、イーヴからすればあまり良い環境ではなかったようだ。エルフェと同じように、彼の眉は悲しげに下がったり、かと思えば怒ったように釣り上がったりする。

「あまりシェイラの故郷を悪く言いたくないが」 

 眉を寄せてため息をつきながら、イーヴは腕を組んだ。

「ひとりきりで部屋に閉じ込め、食事も衣服も最低限以下のものしか与えないというのは、酷すぎると思う」

「でも、生贄として捧げる日まで、しっかりと育て上げるのがラグノリアの役目だったわけでしょう。私はこうして健康に成人を迎えることができましたから、問題はないと思います」

 多少細身なのは仕方ないけれど、健康には自信がある。胸を張ったシェイラは、だけどとつぶやいて眉を下げた。

「でも私、生贄じゃないんですよね。花嫁って皆さん呼んでくれるけど、イーヴはそれでいいんですか? 結婚というものは、お互いに愛しあう者同士がすることだと思うのですけど」 

「それに関しては気にしなくていい。花嫁と呼んではいるが、あくまでそれは形式上の話なんだ」

 大きな口で肉を食べながら、イーヴが説明するように指を立てる。

 故郷ラグノリアと、ここドレージアではシェイラの存在に対する認識に大きな差があるのは確実だ。

 ラグノリアが生贄として双子の片割れを捧げていたことは間違いないのだけど、竜族側は今までも捧げられた娘を花嫁として受け入れていたという。

 恐らく、迎えに行った際にいつも竜の姿をとっていたことが生贄と勘違いされた原因ではないかと、イーヴはため息まじりにつぶやいた。
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