竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 空の上に住むイーヴたち竜族の者にとって、ラグノリアの空気は澱んでいると感じるらしい。そんな空気の中で人の姿となれば身体の負担は大きいし、そもそも地上では長時間人の姿を保つことが難しいのだと聞かされる。

 竜族と人間の違いに驚きつつも、シェイラはふと浮かんだ疑問に首をかしげた。

「それなら、イーヴはどうして私を迎えに来てくれた時に姿を変えたんですか?」

 最初は竜の姿だったのに、わざわざ身体に負担をかけてまで彼が人の姿となった理由が分からない。

 その問いに、イーヴは小さく笑ってシェイラの頭を撫でた。

「怖がらせたくなかったからな。……まぁ、この顔も大概怖いと言われるんだが」

 自嘲気味にそう言うけれど、彼が優しい人であることはシェイラもよく分かっている。

「イーヴは優しいですよ。全然怖くないです」

「ありがとう、シェイラ」

 微笑んだイーヴは皿に残った肉を綺麗に食べ終えると、また新たな肉を皿に盛っていく。食べるか? と聞かれて、シェイラは慌てて首を振った。
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