竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 そう言ってシェイラは、ソファから立ち上がると寝衣を脱ごうとした。途端に、わあぁとイーヴが悲鳴のような声をあげる。

構わずボタンを外そうとしたところで、腕を掴まれた。

「……シェイラ、そういうのは本当に必要ないから」

 視線をそらしつつ、イーヴがため息混じりにつぶやく。その頬が赤く見えるのは酒のせいなのか、それとも照れているのか。

「やっぱりこんな貧相な身体では、そそらないですかね。これでも胸は結構あるんじゃないかと思ってるんですけど」

「いや、その、そそるとかそそらないとかじゃなくてだな」

「私、思ったんです。成人になったその日に生贄として捧げられる意味は、こういうことだったんじゃないかなって。背はあんまり伸びなかったけど、ちゃんと成人してるんですよ」

 胸を張ってみせると、イーヴが頭を抱えてため息をついた。

「いや、そうじゃなくて」

「大丈夫です! 経験はないけど、本で読んだことはあるので大体の流れは分かってます。上手くできるかどうか分からないけど、頑張るので」

「だから……」

 低く唸って頭をがしがしと掻いたイーヴが、そばにあったブランケットを取り、ぐるぐると巻きつけるようにシェイラを包む。ふかふかのぬくもりに包まれるのは心地いいけれど、これでは初夜を全うできないという気持ちもある。

「別にこういうことをしなくても、竜族はラグノリアを守る。シェイラが負い目に感じることは何もない」

「でも」

 小さく唇を尖らせると、イーヴの大きなため息が響いた。
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