竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「残念。俺は今年で二百九十七歳だ」

「にひゃく……っ!?」

 驚きのあまり、裏返った声をあげたシェイラを見て、イーヴが肩を震わせて楽しそうに笑う。

「竜族はおよそ千年は生きるからな。だから、シェイラなんてまだまだお子様だ」

「う……っ、それは、そうかもしれないですけど」



 人間としては成人したはずなのに、竜族の彼から見ればまだまだ赤子のようなものなのだろう。シェイラが赤ん坊と結婚したり初夜を迎えるなんてことが考えられないのと同じで、イーヴにとってはシェイラは全くの対象外ということだ。

 そう考えると胸の奥が少しちくりと痛んだような気がして、シェイラは思わず胸を押さえた。

 なぜ胸が痛むのか、その理由はシェイラには分からない。こんな風に胸が痛むのは生まれて初めてだし、ここに来てから、シェイラの感情は色々なことで揺さぶられっぱなしだ。

「さあ、そろそろ寝よう。部屋まで送るから」

 立ち上がろうとしたイーヴの服の裾を、シェイラは無意識のうちに掴んでいた。驚いたように動きを止めたイーヴを見上げて、シェイラは掴んだ服の裾をぎゅっと握りしめる。
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