竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「今夜は初夜だから……何もなくても、一緒に夜を過ごしたいです」

「シェイラ」

「形だけでもいいんです。私がイーヴの花嫁だというなら、その務めを少しでも果たしたいです。別々に眠る初夜なんて、だめです」

 少し黙ったあと、イーヴは何かを決意したような表情でうなずいた。

「分かった。じゃあ、一緒に寝よう。ただ、何もせずに眠るだけだぞ」

「はい。それで充分です」

 こくりとうなずくと、イーヴがまるで褒めるように頭を撫でてくれる。

 そのぬくもりにホッとすると同時に眠気が襲ってきて、シェイラは小さく欠伸をした。それを見たイーヴがくすりと笑って髪を梳く。

 やっぱり子供扱いされているなと思うものの、慈しむような大きな手があたたかくて嬉しくて、離れたくないと思う。

 ベッドに入るよう促されて、その広さに驚きつつもシェイラは再び欠伸をして目を擦る。

「おやすみ、シェイラ」

 低い声で囁かれるのが、まるで子守歌のように耳の奥に浸透していく。おやすみなさい、と返事をしたつもりだったけれど、それが言葉になっていたかどうか分からない。

 半分夢うつつに、ここに来てからすごく幸せだと微笑んで、シェイラは眠りに落ちた。
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