竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「何しに来た、ルベリア」

「イーヴが花嫁を迎えたって聞いたから、お祝いに来たのよ」

 怒り滲ませるようなイーヴの低い声にも動じる様子を見せずに、ルベリアは興味津々といった様子でシェイラの顔をのぞき込む。

 彼女の真っ赤な唇が弧を描くのを見て、シェイラは思わずイーヴのシャツの背中を掴んでしまった。竜族は人を喰わないとイーヴは言ったけれど、ルベリアの笑顔は少し怖い。

 それを見て、ルベリアは驚いたように眉を上げる。

「驚いた。すごく信頼されてるじゃない、イーヴ」

「おまえの圧が怖すぎて、シェイラが怯えてるからだろ」

 額に手をやったイーヴが、大きなため息をついてシェイラを振り返った。その表情は、微かに苦笑が混じっているものの、シェイラを安心させるように優しい。



「シェイラ、怖がらなくてもいい。こいつは、俺の幼馴染だ」

「幼馴染……?」

 恐る恐るイーヴの背から顔をのぞかせると、ルベリアがにっこりと笑って手を振った。

「こんにちは、シェイラって呼んでいいかしら。小さくて可愛いわねぇ。素敵な花嫁をもらったわね、イーヴ」

 軽やかなヒールの音を響かせて、ルベリアは更に近寄ってくると、イーヴを押しのけてシェイラの手を握った。

「イーヴとは昔からの腐れ縁なんだけどね、案外いいやつなのよ。こんな顔してるから、怖がられがちなんだけど。だから、シェイラも仲良くしてくれると嬉しいわ」

 握られた手は少し強くて、見つめる瞳の強さにも少し圧倒されそうだけど、ルベリアが心からそう思っているのが伝わってきたから、シェイラはこくりとうなずいた。
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