竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!? ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「……っシェイラ」
驚いたように息をのんだイーヴに気づいて、シェイラは慌てて手を引っ込めた。
「ご、ごめんなさい。触っちゃだめでしたか」
「いや、だめではない……が、気持ち悪くないか? シェイラには、その……鱗など、ないだろう」
「確かに私には鱗はないけれど、イーヴの鱗はとっても綺麗だし、気持ち悪いわけがないですよ」
許可を得て、シェイラはもう一度撫でるように鱗に触れる。ラグノリアで結界の維持のために力を込めていた竜鱗石も綺麗だったけれど、イーヴの鱗の美しさには敵わない。透き通るようなこの青い鱗を身に纏った竜の姿も、とても美しかったなと思い出してシェイラは微笑んだ。
「人の姿のイーヴの方が親近感はあるけど、竜の姿もすごく素敵だったもの。大きくて強そうで、かっこよかったです」
「シェイラは、竜の姿が怖くないのか」
「最初はちょっとびっくりしたけど、今は全然怖くないですよ。だってイーヴは、最初からすごく優しかったから」
背に乗せたシェイラが落ちないようにしっかりつかまっていろと声をかけてくれたことも、道中寒いからと上着を貸してくれたことも、シェイラの名前を褒めてくれたことも。どれも忘れられない思い出だ。
イーヴの背に乗って空を飛んだ時に頬に感じた風の冷たさも、ドレージアを初めて見た時の感動も、まだ鮮明に覚えている。
あの時の浮遊感と、このあと喰われるのだと覚悟して少しの不安を抱いたことを思い返していると、ふと頭にあたたかなものが乗った。そのぬくもりに視線を上げると、シェイラの頭をそっと撫でたイーヴが何故か泣き出しそうな顔をしていた。