竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 爪の先ほどの大きさだったそれは、みるみるうちに大きくなり、竜の姿となる。大きく翼を広げた黒い影を見上げて、シェイラは圧倒されるように口を開いた。

 本で読んだり話を聞いたことはあっても、実際に竜を目にするのは初めてだ。シェイラの身体より数倍大きくて、全身は硬そうな鱗で覆われている。陽の光に反射したのか青い鱗が一瞬きらめいて、その美しさにシェイラは目を奪われた。



 大きく強く、何より美しい。

 あの竜に喰われるのなら悪くないと思いながら、シェイラはまっすぐに竜を見つめる。

 くわっと開いた口の中には、鋭利な歯が並んでいる。痛いのは嫌だから丸呑みだといいなと思いながら、シェイラは祈るように握った手に力を込めた。

 強く目を閉じたせいか、目蓋の裏に今までの出来事が次々と浮かんでは消える。走馬灯というやつだろうかと思いながら、シェイラは短い人生を振り返った。
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