竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!? ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「……ありがとう、シェイラ」
「どうしたんですか、イーヴ。泣きそう?」
「いや、何というか……嬉しくて」
首をかしげたシェイラに、イーヴが照れ隠しのように鼻をこすって笑う。
「俺はこんな顔だから、よく怖がられてしまうんだ。だから、シェイラが怖くないと言ってくれて、本当に嬉しい」
「ふふ、イーヴが嬉しいなら私も嬉しいです。夫婦は喜怒哀楽を分かち合うものですから」
頭を撫でる大きな手のぬくもりに嬉しくなりながら、シェイラはさりげなく夫婦という言葉を織り交ぜてみる。イーヴがそれを否定することなく微笑んでうなずいてくれたことに、更に喜びが沸き起こった。
「そういえば竜族の人たちは、竜の姿にはあんまりならないんですか?」
くしゃくしゃと頭を撫でる手に目を細めながら、シェイラはイーヴを見上げた。竜族の国だというのに、ドレージアに来てから一度もイーヴが竜の姿になったところを見かけていない。もしかして、シェイラを怖がらせないようにと気を使われているのではないだろうか。
シェイラの考えは当たっていたようで、イーヴは少し困ったような表情で手を止めてしまった。