竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!? ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「本当に、見たいと思うか?」
まるで問い詰めるかのように、イーヴはシェイラの肩を掴む。その手は決して痛くないけれど、まっすぐに見つめるイーヴの金の瞳から目が離せない。
「えぇと、イーヴが見せてくれるなら。無理にとは言わないですけど」
シェイラは、イーヴの手に自らの手を重ねた。
強い眼差しの裏に見え隠れするのは、怯えだろうか。怖がられることを恐れているようなイーヴに、シェイラは大丈夫だという意味を込めて微笑んだ。
「……分かった」
低い声でつぶやいたイーヴが、覚悟を決めるように一度目を閉じる。次の瞬間、彼の姿は大きな竜に変わっていた。
こうして見るのは二度目の竜の姿。青く透き通った鱗が、朝の光を反射してきらりと輝いている。見上げるほどに大きな姿も、口元からのぞく鋭い歯も、今のシェイラにとっては何ひとつ怖くない。
人の姿をしていた時と同じ色をした金の瞳が、躊躇いがちにこちらを見つめている。
シェイラは、そっと腕を広げるとイーヴに抱きついた。大きな竜の身体を抱きしめることはできないけれど、全身をぴたりとくっつけて頬を寄せる。
「ふふ、あったかい。イーヴはとても綺麗な竜ですね」
イーヴは何も言わなかったけれど、返事の代わりに小さく鼻を鳴らした。その鼻息で、シェイラの髪がふわりと揺れる。
「また、空を飛んでみたいな。すごく気持ちよかったし、何だか自由になれたような気がしたの」
生贄として部屋から出ない生活は決して不満ではなかったけれど、それでもイーヴの背に乗って空を飛んだ時は、外の世界へ飛び出していくような開放感があった。
あまり陽の当たらない小さな部屋の中が世界の全てだったシェイラに、イーヴは世界の広さを教えてくれた。