竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

空を駆ける

「イーヴ、お待たせしました!」

 身支度を整えて中庭に戻ると、竜の姿で身体を丸くして休んでいたイーヴがぱちりと目を開けた。人の姿の時より大きなその金の瞳を見るたびに、シェイラは丸い月を思い出す。

「ん、ちゃんと厚着してきたな」

 鼻先で優しく触れられて、シェイラはくすぐったさに小さく身体をよじって笑った。

 その気になれば小柄なシェイラの身体など一撃で吹っ飛ばすこともできるはずのイーヴが、力を加減してそっと触れてくれることが嬉しくてたまらない。何だかとても、大切にされているような気がするから。
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