竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 ドレージアは巨大な空中都市だけど、そのまわりにもたくさんの小さな島が浮かんでいる。イーヴはその島々の間を縫うように進み、随分と離れた場所にある小さな島のひとつに降り立った。

 そこは大きな木が一本だけ生えている島で、地面には色とりどりの小さな花が咲いている。

「わぁ、お花がたくさん……!」 

「この木陰で昼寝をするのが好きなんだ。誰も来ないからゆっくりできる、秘密の場所だ」

「ふふ、確かにとっても気持ちよさそうです。私もお昼寝したくなっちゃいそう」

「まぁ、とりあえずは飯が先だな」

「確かに、そろそろお腹が空いてきましたね」

 うなずいて笑いながらイーヴを振り返ると、彼は人の姿に変わったところだった。小さな島といってもそれなりの広さはあるから竜の姿でも狭くはないだろうけど、食事をするなら人の姿の方がいいのだろう。

 敷物を地面に敷いて、シェイラはバスケットの中身を出して広げていく。こうやって外で何かを食べるなんて初めてのことで、わくわくしてしまう。

「ねぇ、イーヴ。これってピクニックですよね?」

「ん? あぁ、そうだな」

「やっぱり! 本で読んで、一度してみたいなって思ってたんです。夢が叶いました!」

 はしゃぐシェイラの頭を、イーヴがぽんぽんと撫でてくれる。見下ろす金の瞳も優しく細められていて、まるで幼子をあやすようだと思うものの、それがまた少し照れくさくも嬉しい。
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