竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「こうやって二人で出かけるだけじゃ、不満か?」

「不満じゃないです。すごく嬉しいって思ってるもの」

「それなら良かった。これだって夫婦らしいこと、だろ?」

「でも私、イーヴの妻として何の役にも立ってないです。だからせめて、イーヴの性欲を解消するお手伝いができたらなって」

「うん、とりあえずそこから離れような」

「だって、お互いの利害が一致すると思いませんか? 私は役目を果たせて満足だし、イーヴは性的に満足……っんん!?」 

 一生懸命に訴えようとしたシェイラの言葉を止めるように、イーヴが口に赤い果実を放り込んだ。その瞬間口の中に広がる甘い味に、シェイラは思わずもぐもぐと咀嚼してしまう。

「……んっ、もう、話してる最中だったのに」

 こくりと果実を飲み込んでから、シェイラはイーヴをにらむように見上げた。唇にも果汁がついていて、ぺろりと舐めると甘い味がする。

「……逆効果だったか」

 困ったように眉を寄せて視線を逸らしたイーヴを見て、シェイラは小さく首をかしげた。

「逆効果?」

「何でもない。ほら、もうひとつ」

 唇に当てるようにまた果実を差し出されて、シェイラは戸惑いつつも口を開ける。まるで小さな子供のように食べさせてもらうのは少し恥ずかしいけれど、何だかくすぐったくもある。

 ついでにぽんぽんと頭も撫でられて、その優しいぬくもりに幸せを感じて、シェイラは微笑んだ。

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