竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

帰りたくない

 食事を終えたシェイラは、うずうずとした表情でイーヴを見上げる。怪訝な表情で首をかしげた彼に、目の前に広がる花畑を指さした。

「あっちの方に咲いてるお花を見てきてもいいですか?」

「いいけど、あまり遠くまで行くなよ。目の届く範囲にいてくれ」

 小さな島なので、端まで行ってもイーヴから見えなくなることはないのだけど、確かに足を滑らせて落ちたりしたら大変だ。シェイラは気をつけると返事をして、駆け出した。



 色とりどりの花は、風にそよいでまるでシェイラを歓迎するかのように揺れている。イーヴの屋敷の庭で育てられている花も綺麗だけど、こういう素朴な花も可愛くて好きだなと思いながら、シェイラは小さな花弁をそっと指でつついた。

 近くで見ると花は小さな星の形をしていて、たくさんの花が集まっているさまはまるで星座を見ているようだ。昼の空に星を見ることができたなら、きっとそれはこんな光景だろうと想像してシェイラはくすくすと笑う。

 本でしか見たことのない星座を思い出しながら、シェイラは花と花を結ぶように指先でなぞる。今度は夜に、本当の星座をイーヴと見れたらいいなと思いつつ振り返ると、木の下に座ったイーヴがシェイラの視線に気づいたのか片手をあげてくれた。
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