竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「お花、すごく可愛かったです!」

「良かったな」

 イーヴのもとに駆け戻って笑顔で伝えると、彼は笑いながらシェイラの頭に何かを載せた。首を傾げて頭に手をやると、柔らかな葉が指先に触れた。

「花冠……?」

 確認するように一度手に取って、シェイラは笑顔を浮かべた。星の形をした花を中心とした花冠は、ところどころに葉も編み込まれていて、瑞々しい香りを放っている。

「ありがとうございます! イーヴは器用なんですね。すごく素敵」

「子供の頃の記憶を頼りに作ってみたが、案外覚えてるもんだな」

「そっか、イーヴにも子供の頃があったんですよね。えぇと……二百年くらい前?」

「そうだな、それくらいか。シェイラはまだ生まれてもない頃だな」

 揶揄うようなイーヴの言葉に、シェイラはほんのり唇を尖らせた。

 シェイラにとって二百年前は、歴史書を紐解くほどに気の遠くなる話だけど、イーヴにとっては記憶を辿れるほどの過去の話。何気ないやりとりで二人の生きてきた時間の長さの違いを突きつけられて、シェイラは少しだけ胸が苦しくなる。こんなに年の差があったら、イーヴに妻として見てもらえるはずがない。

 騒ぐ胸を抑えるように息を吐いて、シェイラは再び花冠を頭に載せた。

「可愛くて嬉しいです。宝物が増えました」

「喜んでもらえて良かった。よく似合ってる」 

「えへへ、持って帰ってお部屋に飾ろうっと」 

 生花だから長持ちはしないかもしれないけど、イーヴからもらったものなのだ、大切に取っておきたい。

 ずっとかぶっておきたかったけれど、風で飛ばされてしまったら大変なので、シェイラは花冠を丁寧にバスケットの中にしまった。
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