竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!? ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
やがて遠くに見覚えのあるドレージアが見えてきた。ぐんぐん近づく距離に、このお出かけの終わりを予感して少しだけ寂しくなる。
その時、雲の切れ間にちらりと地上が顔をのぞかせた。遥か遠くだけど、森に囲まれた特徴的な国土と中央にある青い城は、ラグノリアに違いない。
「どうした?」
急に黙りこくったシェイラに気づいたのか、イーヴが声をかける。どう返事をすればいいのか分からず言葉を探していると、彼も眼下に見えるラグノリアに気づいたのだろう。小さく納得したような声をあげた。
「あぁ、ラグノリアが見えるな」
「そうですね」
生まれ育った国を見ても懐かしいと思えない自分に戸惑いつつ、シェイラは言葉少なにうなずく。
「帰りたいと、思うか」
「……っ」
イーヴの声は優しくて、シェイラが故郷を恋しく思っていないか気遣っているのだろう。だけど、シェイラにはその言葉がまるで追い返されるように聞こえてしまう。