竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 聖女の双子の片割れだからか、シェイラにも僅かながら力がある。結界の強化や森を歩く際のお守りとして使われる、竜鱗石と呼ばれる青い石に祈りを込めるのだけが、シェイラにできること。

 単調な日々の唯一の楽しみは、時々マリエルが人目を忍んで会いに来てくれることだった。

 必要以上の接触は禁じられていたからほとんど会話を交わすこともなかったけれど、彼女が囁くように『お姉様』と呼びかけてくれることが嬉しかった。



 幼い頃からその力を使って国を守っているマリエルは、聖女として皆に愛される心優しい少女だ。その優しさはシェイラにも向けられて、彼女は部屋にやってきては様々なものをこっそりと扉の外に置いていってくれた。

 美味しいお菓子や可愛い小物、そして本。

 シェイラの知らない世界を教えてくれる本は、何より嬉しい差し入れだった。お菓子のように食べてしまえばなくなることもなく、ページをめくると何度でも様々な世界に連れて行ってくれるから。

 シェイラの脳裏に、今までに読んできた様々な本が浮かんでは消える。

 マリエルの持ってきてくれる本は、お姫様の出てくるものが多かった。本物のお姫様を見たことはないけれど、きっとマリエルのような女の子のことをいうのだろうとシェイラは思う。

< 8 / 128 >

この作品をシェア

pagetop