竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 ふと昨晩、マリエルの成人を祝う席に参加したことを思い出す。

 翌日には生贄となる娘にも最後にせめて幸せな思い出をということなのか、シェイラも参加を許された。華やかな場の空気に圧倒されて、壁際でそっと気配を消して佇むのが精一杯だったけれど。

 人々の祝福を受けて頬を染めて微笑む妹は、輝くように美しかった。集まった人々の前で王太子との婚約が決まったと大々的に発表されたから、いずれマリエルは本物のお姫様になるのだろう。優しげな王太子と寄り添う二人はとてもお似合いで、この国の未来が明るいであろうことをシェイラも感じ取っていた。



 妹の幸せのため、そしてこの国のために竜に喰われる。

 それが、何も持っていない自分にできる全て。

 どうして自分なのだろう、何故生贄に選ばれたのだろうと思ったこともあるけれど、きっとそういう運命なのだ。

 次に生まれ変わることがあれば、今度はマリエルのように皆に愛される人になりたいなと思いながら、シェイラはゆっくりと目を開けた。
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