竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
 イーヴのことを、怖くないと笑ってくれたシェイラ。竜の姿すら褒められて、その笑顔にイーヴがどれほど救われたか、彼女は知らないだろう。怖がらせるだろうからと見せるつもりのなかった胸の鱗も、シェイラは綺麗だと言ってくれた。彼女の細く柔らかな指が鱗に触れた時は、思わず抱きしめたくなるのを必死で堪えたほどだ。

「えぇ、いつもにこにこと笑顔で接してくださるシェイラ様に、我々はとうに心を撃ち抜かれておりますよ。アルバンなんて、目に入れても痛くないほどの可愛がりようですからね」

 くすくすと笑いながら、レジスは優雅な仕草でカップを傾けた。こくりと一口飲んで、またじっとイーヴを見つめる。

 今度は何だと首をかしげたイーヴに、彼は楽しそうな表情で身を乗り出した。

「仲睦まじいお二人を見ていると、いずれは本当に花嫁として……」

「やめてくれ、レジス。シェイラが俺に懐いてくれていることは否定しない。だけど彼女を縛りつけるような真似はしたくないんだ。ただでさえあの子は、国のために生贄となるよう言い聞かせられて育ってきたんだ。俺の――いや、竜族の言葉はシェイラにとって、故郷を守るための命令になりかねない。俺は、あの子が自由に生きられたらそれでいいと思っている。これから先も、彼女は形だけの花嫁として扱うつもりだ」

 首を振るイーヴを見て、レジスは一瞬残念そうな顔を浮かべたものの、目を伏せてうなずいた。

「そう、ですね。出過ぎたことを言いました。ですが我々は、イーヴ様の幸せも願っているのですよ」

「俺は今でも十分、幸せだよ」

 はぐらかすようにそう言って、イーヴはカップに残った紅茶を飲み干した。
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