竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい
「……そう、シェイラはあの子とは違う。……違うんだ」

 拳を握りしめて、イーヴはつぶやいた。脳裏によぎるのは、イーヴの姿を見るたびにびくりと怯えたように身体を震わせて、丸い瞳をいつも潤ませていた彼女。シェイラの前にラグノリアから迎えた花嫁だった彼女は、ひたすらに竜族に、イーヴに怯えていた。

 平気だからと無理して笑う痛々しい表情も、どんどん痩せこけていくその身体も、イーヴは忘れることができない。

 シェイラには、同じようになってほしくない。だからイーヴは、シェイラとの接触は最小限にしておくつもりだった。イーヴにできるのは、シェイラに居心地の良い環境を与えて何不自由なく寿命を全うさせることだけ。そう思っていたのに。
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