竜族に生贄として捧げられたはずが、何故か花嫁として溺愛されています!?  ――――青き竜は、不遇な令嬢をひたすら甘やかしたい

夜のお誘い

 入浴を終え、寝支度を済ませたシェイラは鏡の前でひとり気合を入れていた。

「やるわよ、シェイラ。今夜こそは……まず、一緒に寝てもらうことを目標に!」



 本当は夜の営みをできたならと思うけれど、焦ってはならない。少しずつ距離を詰めていくのがきっと近道だ。

 マリエルに借りた本でも、愛のない結婚だと思っていた二人が距離を縮めて本当の夫婦になる話がたくさんあった。読み返して復習できたら一番いいのだけど、残念ながら私物はすべて処分してきてしまった。今度ルベリアに頼んで、ドレージアで流行っている恋愛小説を買いに連れて行ってもらおうとシェイラは頭の隅にしっかりとメモしておく。



 イーヴに好きになってもらうと宣言したものの、二人の間には色々な問題があることは分かっている。およそ三百年近くの年の差に、種族の違い。竜族が人間を恋愛対象として考えているのかすら分からない。

 だけど、なんとなくの感覚として竜族は人間の十倍の寿命という感じがするので、恐らくイーヴは人間に換算すると二十代後半から三十代前半といったところだろうか。そのくらいの年の差なら、ありだと思いたい。

 長く生きるイーヴにとって、シェイラの寿命はほんのひととき。そのわずかな時間でいいから、自分だけを見てほしい。
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