ならば、悪女になりましょう～亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか？～（試し読み）

プロローグ

ゼノビア王国の王都。その中心にある大聖堂には、今日は多数の貴族が集まっていた。
　今日、ここで第二王子フィリオスの婚約者、アウレリア・デュモン侯爵令嬢の葬儀が執り行われるのだ。

　本来、大聖堂では王族の葬儀しか行わないのだが、『よくしてくれた婚約者を見送ってやりたい』というフィリオスのたっての願いにより、準王族として、ここでの葬儀が許された。
　参列者達を見下ろす女神像には、ステンドグラスの光が柔らかく降り注いでいる。
　アウレリアは、馬車で別荘に向かった時、盗賊に襲われて行方不明となっているため、その足元に置かれた棺の中身は空っぽだ。
　遺体は獣に食われてしまったのだろうというのが、捜索にあたった者達の見解だった。

　デュモン侯爵家の人々は、一様に悲痛な面持ちだ。ハンカチを目元にあてがう夫人と侯爵家の次女リリアン。
　それを見守る者達は、複雑な想いを胸に抱いていた。
　アウレリアとリリアンの間の確執は、参列している貴族達の間では広く知られた話だ。
　なにしろ、現在の侯爵夫人は、かつては侯爵の愛人だったのだ。
　つまり、アウレリアとリリアンは異母姉妹。