ならば、悪女になりましょう~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~(試し読み)
「そうではありませんか? 殿下は今、楽しんでいらっしゃるのです。そこに私が口を挟むことはできません」
たしかに婚約者であるアウレリアを放置し、他の女性と話し込んでいるフィリオスの行いは褒められたものではない。
だが、密室で話し込んでいるのならばともかく、広間の片隅。それにふたりきりではなく、リリアンの友人達も一緒だ。
未来の義妹と友好を深めていると言われてしまえばそれまでで、その間に割って入るのは、フィリオスもいい気はしないだろうし、アウレリアが狭量なように他の人の目に映りかねない。アウレリアがためらう理由は、そこにもあった。
「……なるほど」
やはり、エルドリックは面白がっている。彼は、唇の端を上げた。
婚約者を放置して他の女性と話し込んでいる王子なんて前代未聞だ。嫉妬したそぶりも見せず、それを当たり前のように受け入れる王子の婚約者も。
「……それなら、一曲お相手願えるか?」
なにを考えているのか、まったくわからない笑みと共に、エルドリックはアウレリアに手を差し出した。
その手を取るべきか否か迷ったのは、彼と踊りたい令嬢は山ほど心当たりがあったからだ。
たしかに婚約者であるアウレリアを放置し、他の女性と話し込んでいるフィリオスの行いは褒められたものではない。
だが、密室で話し込んでいるのならばともかく、広間の片隅。それにふたりきりではなく、リリアンの友人達も一緒だ。
未来の義妹と友好を深めていると言われてしまえばそれまでで、その間に割って入るのは、フィリオスもいい気はしないだろうし、アウレリアが狭量なように他の人の目に映りかねない。アウレリアがためらう理由は、そこにもあった。
「……なるほど」
やはり、エルドリックは面白がっている。彼は、唇の端を上げた。
婚約者を放置して他の女性と話し込んでいる王子なんて前代未聞だ。嫉妬したそぶりも見せず、それを当たり前のように受け入れる王子の婚約者も。
「……それなら、一曲お相手願えるか?」
なにを考えているのか、まったくわからない笑みと共に、エルドリックはアウレリアに手を差し出した。
その手を取るべきか否か迷ったのは、彼と踊りたい令嬢は山ほど心当たりがあったからだ。