ならば、悪女になりましょう~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~(試し読み)
第一章 悪女と呼ばれた侯爵令嬢
煌々と照らされるシャンデリアの光。集まった男女の身を飾る宝石の煌(きら)めき。ゼノビア王国の王宮で開かれている舞踏会は、今夜も華やかだ。
 楽師達は、流行の曲から王宮で奏でられるにふさわしい円舞曲まで、次から次へと奏で続けている。音楽に合わせて、紳士淑女達はダンスに興じ、盃を掲げて会話に興じている。宴は最高潮に達しようとしていた。

(殿下は、どこに行ってしまったのかしら)

 アウレリア・デュモンは、長い睫毛に縁どられた青い目を伏せた。デュモン侯爵家の長女であるアウレリアは、この国の第二王子フィリオスの婚約者である。
 今日の彼女は、目の色に合わせた青いドレスを身にまとい、装身具はサファイアで統一していた。
 亡き母のドレスを直したものだが、職人の手を借りて仕立て直したために目につくほど古臭くはない。若い女性にしては地味とはいえ、初夏の夜にふさわしい爽やかな装いだ。

 アウレリアの顔には浮かない表情があった。

 このところ、婚約者のフィリオスとの仲がうまくいっていない。いや、以前からうまくいってはいなかったのだが、最近それが急加速している気がする。
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