ならば、悪女になりましょう~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~(試し読み)
 王妃のお声がかりでフィリオスと婚約したのは、今から三年前のこと。当然ながら、フィリオスにもアウレリアにも選択の余地なんてなかった。
 それでも、最初の頃はよかったのだ。ぎこちないながらも、会話をしようとする努力は双方に見受けられたから。
 ……でも。
 フィリオスは、すぐにその努力を放棄した。
 共に夜会に出席する時、入場まではエスコートしてくれても、すぐにフィリオスが姿を消すようになったのはいつだっただろう。このところ、エスコートすらしてもらっていない。
 王宮の茶会に招かれても、フィリオスが姿を見せなくなったのは、ここ半年ほどだろうか。

(……愛されて結婚できるなんて、期待はしていなかったけれど)

 この扱いはあんまりである。
 軽やかにくるくると回る男女が、アウレリアの目に飛び込んでくる。
 最後にフィリオスとダンスをしたのは、いつだっただろうか。三か月前? 半年前? いや、もっと前だったかもしれない。
 頭を振れば、背中に流していた金髪が揺れる。揃(そろ)いのサファイアの耳飾りも。

(……ああ、いたわ)

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