ならば、悪女になりましょう~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~(試し読み)
 平民として育ってきた期間があるからか、今になってもリリアンの言動には貴族らしからぬところが多々見受けられる。
 それでもいい、むしろそこが新鮮でいいと喜ぶ若い男性も多く、今は、誰と婚約を結ぶべきか真剣に考えているようだ。

(お父様も、私の時とは違って、リリアンが幸せになれる相手を探すでしょうしね)

 ふと、そんな皮肉な考えが浮かんでしまう。
 父はアウレリアの結婚を、王家と繋(つな)がるためという理由で決めた。アウレリアも文句は言わなかった。貴族の家庭とは、そんなものだと思っていたから。
 父がアウレリアに向ける目とリリアンに向ける目もまた明らかに違っていた。リリアンには愛おしくてしかたないという目を向けている。

 両親は政略結婚だったと聞いている。

 けっして怒鳴り合うような険悪な仲ではなかったが、家庭的な温かさというものはそこには存在しなかった。
 だが、継母とリリアンが来てからは、屋敷の様子は一変した。
 いたるところに響く、リリアンの明るい声。そして、それをよしとする父。同じことをアウレリアがやったならば、「はしたない」と叱りつけただろうに。

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