学級崩壊デスゲーム
ファーストステージ 〜島鬼ごっこ〜

恐怖の島鬼

『ファーストステージは、4人1組で行います。まず、みなさんの中で4人組をお作りください』
4人1組って……私のグループは3人だ。
あと1人足りない……。
「っ、誰か……!」
「おい、俺らで組むぞ!」
「誰かアイツ誘いに行けよ」
机の間を通り抜けて、2人の元に行く。
「あと1人、どうする……?」
「うーん……」
「あ、薬師寺(やくしじ)さんは?おーい、薬師寺さぁん!」
薬師寺華香(やくしじほのか)さんは、いわゆる一匹狼で、いつも1人で過ごしている。
でも本人はあまり気にしていないみたい。勉強はすごくできてて、かなりの優等生。
「なに?」
「うちら3人組だから、薬師寺一緒に組んでくれない?」
なぎちゃんはこういうときに頼りになる。
「別にいいけど」
クールに言い放った彼女に、ほっとため息。
断られちゃったらどうしようかと思った……。
教室内を見回すと、まだ余っていて組めていない人や、普段5人組のグループから、誰が抜けるかなどを話し合っている人達もいた。
それで言うと、私たちはスムーズに組めて、ラッキーだったのかもしれない。
喉、乾いた……。
自席に戻り、カバンから水筒を取り出して、中身を口に含む。
喉が潤ったところで、3人のところに戻る。
まわりを見ると、全員がグループを組めたみたいだ。
「なんでうちがオイラと組まなきゃなんないわけ!?」
「ゆまちゃん、落ち着いて……」
「俺らなんてクズ日比野とだぞ……」
文句を言っている人もいるけど……。
『全員組めたようですね』
そう言ってゲームマスターは口角をにやりと上げ、プロジェクターに一覧表を出した。

A 仲川(なかがわ)このん、浅尾涼音(あさおすずね)、箕輪飛鳥(みのわあすか)、滝優佳(たきゆうか)
B 天沢南那(あまさわなな)、千種芽依(ちぐさめい)、吉野優真(よしのゆま)、平井(ひらい)みな
C 四葉志帆、篠山美空、藍田なぎさ、薬師寺華香
D 長嶋悠斗(ながしまゆうと)、河合晴紀(かわいはるき)、藤堂真生(とうどうまお)、堤亮(つつみりょう)
E 和井内駿(わいないしゅん)、三日月隼人(みかづきはやと)、横間響(よこまひびき)、横間奏(よこまかなで)
F 藤代煌(ふじしろこう)、日比野裕樹(ひびやゆうき)、進藤司(しんどうつかさ)、吉田素晴(よしだすばる)
G 浜崎光(はまざきひかる)、木村純太(きむらじゅんた)、南條麻耶(なんじょうまや)、齋藤柑奈(さいとうかんな)

『それでは、ファーストステージは校庭で行うので、みなさん移動をお願いします』
廊下には銃を手に持った男の人がいて。
「どうしよう……」
「いや待て。校庭に行くんだろう?外側から地域の人が見えるはずだ。隙を見て助けてもらおう」
「けーご、頭いい!」
みんなそれぞれの思いを秘めながら、靴を履き替えて校庭に出た。





「えっ……!?」
「なにこれ……!?」
私も思わず目を見張ってしまった。
校門には大きな鎖が頑丈に掛けられていて、周りの柵にはカラスよけのとげとげみたいなものが張り巡らされていた。
「どうしよう、圭吾……!」
みんな大パニックだ。
「こんなこと……現実で有り得るのか……!?」
頭がいい優等生で有名な東圭吾(あずまけいご)くんが眉をひそめて呟く。
『みなさんお集まりのようですね』
ゲームマスターの声が上から響いた。
見上げると、ドローンが舞っている。
『今からするのは"島鬼ごっこ"です』
島鬼……?
『まずは、1人に1つ、腕時計をお配りしますので、腕に付けてください』
腕時計が配布されていく。
左手に付けると、きゅっとベルトが強くしまって、動かなくなった。
かなりきつい……はずれない……?
『校庭に、円が書いてありますよね。ひとつの円につき4人になるように円に入ってください』
私たちは、1番手前の円の中に入ることに。
「おい!1つ足りないぞ!!」
え……?
辺りを見ると、Fと表示されていた、男子4人のグループが円に入れていなかった。
『今からFグループのみなさんは"オニ"となって、他のグループの皆さんを追いかけてもらいます。オニに捕まった人はオニになり、オニだった人は逃げに戻ります。円の中に入っている人はタッチして捕まえることができません』
つまり、円の中に入っていたらタッチされない……ってこと?
なんだ、普通の島鬼じゃん。
そう思っていたとき。
『ただし、円の中にいられるのは1分だけ。1分以上円の中に留まっていた場合は、強制退場となります。自分の残り時間は、配布した時計に表示されているはずです』
強制退場……。つまり、拳銃で撃たれちゃうってことかな……。
腕時計を確認すると、60と表示されている。
『制限時間は15分間です。あ、そうそう。15分が経過した時点で鬼になっていた人は強制退場となりますので、ご注意ください』
ゲームマスターは高らかに叫んだ。
『それでは!よーい、スタート!!』


ゲームとやらが始まっても、動く人は誰もいなかった。
みんな不安そうに顔を見合わせている。
タイマーの残りは30秒を切った。
最初はみんな同時にスタートするから、オニは格段に捕まえやすいはずだ。
Fグループの4人は、固まってひそひそと話し合いをしている。
残り15秒。
ピッピッピッとカウントダウンが始まる。
「これはまずいかも……みんな出ましょう!」
薬師寺さんがそう言って、勢いよく円を飛び出した。
「来たぞ!」
Fグループはみんな男の子だから、追いかけられたらすぐ捕まってしまう……。
けど。
私も思い切って円を出た。
「志帆!?」
「なぎ、私たちも出よう!!」
4人で円の外に出て、急いでFグループから距離をとる。
振り返ると、Fグループはどうやら私たちよりも足の遅い人に目星をつけているみたいだった。
残り10秒を切り、みんながバタバタと外に出始める。
「ねぇ!Aチームと場所交換しない!?」
「オッケー!」
Aチームとうまく連携をとり、場所を交換ふることに成功。
「っ、いや……!こっち来ないでっ」
「俺らだって命かかってんだよ!」
比較的陰キャな子たちに向かって怒鳴りつけるFチーム。
「きゃっ!」
そのとき、Bチームの千種芽依ちゃんがつまづいて転んでしまった。
「ラッキー!」
それを見た藤代くんは、急いで駆け寄って背中に触れた。
『千種芽依がオニになりました。藤代煌は逃げてください』
そうアナウンスが入る。
「っしゃあ! お前らも早く適当なやつタッチしとけよ」
仲間に向かってそう叫ぶ藤代くん。
そういえば……あと何秒!?
急いで時計をタップすると。
『残り18秒』
「また移動しないと……」
変な緊張からか、いつもより息切れが早い気がする。
すでに心臓はバクバクだった。
「今度は……Eチームにお願いしましょう」
1番近いチームと場所を交換する。
「お前らサンキューな!」
「お互い様!」
笑顔で手を振っているなぎちゃん。
そういえば、なぎちゃんは三日月くんのことが好きなんだっけ。
こんなことがなければ、普段通りアタックしたりできたのに。
『滝優佳がオニになりました。進藤司は逃げてください』
滝さんも捕まってる……。
やっぱり、女子の方が捕まえやすいんだ……。
「っし!ナイス司!!」
「いえーい」
ぱちんっとハイタッチしている2人。
不安な気持ちが高まる中、タイムリミットが近づく。
「あとは……」
キョロキョロと辺りを見回すと、たまたまBチームと目が合う。
Bチームと場所を交換したとき。
「きゃああああっ!なんで!?」
悲鳴が聞こえて、慌ててそっちを見る。
「えっ……」
円の中にはBチームの3人。
そして……ひ、日比野くん!?
「"ゲームマスターは円の中に4人"って言ったでしょう?別に、チームなんかで移動しなくてもいいんだよ」
日比野くんはそう言ってクスクス笑った。
「ほら、吉田か木村。1人空いたよ」
その言葉を聞いた吉田くんは、パッと動いて、円に入れなかった天沢南那ちゃんを捕まえようとする。
その途端。
「きゃぁっ!」
南那ちゃんが、同じチームの平井みなちゃんを引っ張って、円の外に突き飛ばした!
「なんで……南那ちゃん!?」
「ラッキー」
みなちゃんの肩にとんっと触れる吉田くん。
『平井みながオニになりました。吉田素晴は逃げてください』
アナウンスを聴きながら移動を繰り返す。
「日比野も意外と使えるんだな」
「それな。よくやるよな、陰キャのくせに」
ヒソヒソと話している声が聞こえてくる。
確かに、日比野くんは目立つようなタイプではなく、むしろ虐められているような人だった。
普段は今にも消え入りそうな声でボソボソと喋り、よくパシリにされて、陽キャに影でイジられている存在。
そんな彼が、クラスメイトに対して反撃を始めた……?
その後も日比野くんは様々なグループのところに入り込んで邪魔をしていた。
「日比野くん……」
不安げにそう呟くみそらっち。
『浜崎光がオニになりました。木村純太は逃げてください』
タイムリミットは残り5分を切った。
円の外に出て移動を開始すると。
「誰か助けてぇっ!」
芽依ちゃんが涙をボロボロこぼしながら叫んだ。
「もうイヤっ!誰かぁぁっ」
体力の限界なのかもしれない……彼女は美術部で、持久走などでもいつもビリだった。
でも……彼女を助けるという行為は、オニになって自分が犠牲になるのと同じだ。
誰もできっこない……私だってできない。
そんなことを考えているうち、残り1分を切った。
「最後の移動よ!」
みんな走って次の円まで移動する。
なんとかたどり着いて、その場にしゃがみこむ。
「志帆大丈夫!?」
「うん……ちょっと力抜けちゃって」
そのまま時間が経過して。
『タイムアップでーす!現在オニの千種芽依、滝優佳、平井みな、浜崎光はここで脱落となります』
4人は仮面を被った人たちに連れていかれてしまった。
「いやぁぁぁあっ!」
芽依ちゃんの叫び声を残して。
『みなさんお疲れ様でした。走り回ってお疲れでしょうから、1度教室にお戻りください。お水などを飲んでも結構ですよ』
ゲームマスターの言葉に誰も返事せず、教室に向かってゾロゾロ歩き始めた。
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