学級崩壊デスゲーム

3ターンめ

『では、3ターン目に参りましょう』
3ターン目は、美空、なぎちゃん、私。
初めての後ろ……怖い……。
1番後ろの人達は、こんな気持ちを抱えていたんだ。
美空、お願い……勝って……!
最初の対戦相手は日比野くん。
「ふふ、怖い?さっきあんなことしちゃったもんね、僕」
「ううん……大丈夫」
首を横に振り、じっと前を見据える。
すると、日比野くんが美空に向かってニコッと笑って、口を開いた。
「僕、別にコイツらどーでもいいんだよね。僕の言うこと1個聞いてくれたら、じゃんけん、わざと負けてあげるよ」
……っ!突然の取引。美空はどうするのかな……。
美空を見ると、バチリと目が合う。
美空は首を横に振って、口を開いた。
「大丈夫。普通にじゃんけんしよう」
彼のことだし、すごく難しい要求をしてくるかもしれない。
「いいの?じゃ、いくよ〜。さいしょはグー、じゃんけんぽん!」
美空はパー。日比野くんは……グー。
「あれ、負けちゃった」
あっけらかんと言い放つ彼。
「日比野てめぇ……!」
日比野くんの列の1番後ろは木村くん。
普段はふわふわした眠そうな声で、面白いことを言って、みんなを笑わせてくれる存在。だっけど。
「木村落ち着け!」
北條くんは木村くんをなだめると、美空を見る。
「あとは頼む、篠山……」
苦しそうな表情でそう言って、後ろについた。
「あ、美空〜!やろやろ〜」
天沢さんが近づいてきて、2回戦を天沢さんとすることになった。
「さいしょはグー、じゃんけんぽん!」
美空はチョキ。天沢さんは、グー……!
「……っ!」
苦い表情を浮かべる北條くんと木村くん。
「ごめん、木村……」
美空が強ばったような表情を浮かべて振り返る。
「……」
木村くんは長いツーブロックの髪の毛をくしゃくしゃとかき混ぜると、自虐ぎみに微笑んだ。
「ま、これも運ってやつなんだろーな」
木村くん……。彼は普段、悪いことなんて全くしていないのに……。
……待って。"悪いことしていないのに"……?
何かが引っかかる……。
「……志帆?」
心配そうになぎちゃんが振り返ってくる。
「あ、ごめん……なんでもない」
今は、こっちに集中……!
最後は天沢さん対、藤堂真央くん。
「おっしゃ、負けねぇ〜!」
「いやぁ、ウチだって木村は死んで欲しくないから!」
「おっけぇ〜」
2人は、にやりと口角を上げながら向き合う。
「さいしょはグー、じゃんけんぽん!」
藤堂くんはチョキ、天沢さんはパー。
……ってことは……!
「木村!」
「え?あ、……おぁぁぁあっ!?」
普段聞いたこともないような声で、北條くんにぎゅっと抱きつく木村くん。
よかった……。
そういえば、天沢さんの最後尾は……三日月くん!?
「あはっ」
慌ててなぎちゃんの方を振り返る。
……っ!?
なぎちゃんは、見たこともないような絶望に顔を歪ませた表情を浮かべていた。
『三日月隼人さん、ここで脱落です』
「仕組んだでしょ、アンタたち!!」
なぎちゃんはずんずんと2人に向かって歩いていく。
「あたし、見た!2人でこそこそ話してるの!!」
「はぁ?何言ってんの?」
天沢さんが目を釣り上げてなぎちゃんを睨む。
「南那、下がろ」
藤堂くんは、天沢さんの肩を押して、教室の隅に歩いていく。
本当に三日月くんが脱落なの……?
そのとき、プロジェクターから強い声が響いた。
『天沢南那、および藤堂真央の不正が確認されました。よって、脱落は2人のどちらかとなります』
やっぱり、という顔をするクラスメイトもいれば、びっくりしたような顔をする人。反応は様々だった。
「どちらかって……なに、2人でじゃんけんでもするわけ」
天沢さんが、イラついたようにとんとんと足を鳴らす。
『そうですね。特に縛りはありませんので、皆様の投票なり、じゃんけんをするなり、お任せします』
ゲームマスターはそう言って音声を切る。
「うーん……まぁ、普通に考えて、じゃんけんじゃねえ?」
最初に口を開いたのは進藤くん。
「そうだよね……」
天沢さんはしゅんと肩を落とす。
私は不安でたまらなくて、ぎゅっと2人の手を握った。
2人もぎゅうっと握り返してくれる。
『キリがなさそうなので、スロットにしまーす』
スロット……?
すると、モニターにルーレットが表示される。
AとB……。
『Aが天沢南那。Bが藤堂真央で』
そう言った瞬間、スロットが回り始める。
「っ……」
「ちょっ……なんで勝手に……!!」
藤堂くんが叫ぶ。
けれど、スロットは止まることなく回り続ける。
怖くなって、ぎゅっと目を瞑る。
薄目で見ていると、動きがだんだん遅くなり、ぴたりと動きを止めた……みたい。
Aは赤色、Bは青色で塗られているけれど……。
恐る恐る目を開く。
矢印は、青を指している。
つまり……。
『藤堂真央、脱落ー』
ゲームマスターは淡々と告げ、藤堂くんは仮面の男に連れて行かれた。
「真央……」
藤堂くん、何も抵抗してなかった……。
犠牲になった人達は、何かしら叫んだり、暴れたりしていたのに。
ただ静かに、自分の死を受け入れているみたいだった。
藤堂くんがドアから出て行き、ドアに着いたガラスから藤堂くんが見えなくなると、その場に誰かが崩れ落ちた。
「真央……まおぉぉぉ……っ」
見ると、亮くんが床に座り込んで涙を流している。
「亮……」
川合くんが優しく亮くんを抱き起こして、立ち上がらせている。
「亮、真央くんの大親友で、保育園からずっと一緒だったらしいよ」
こそっと耳打ちしてくれる美空。
あぁ……。
きゅぅっと胸が締め付けられる。
何も出来ない自分が、ずっと安全圏に居させてもらっている自分が、何より悔しかった。
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