移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
 レインが捕まってから二週間後、監獄に収容されたレインとの面会にリリィとユリスは訪れていた。

「レインくん」
「リリィちゃん………」

 少しやつれた顔をしているが、それでも相変わらずレインは美しい。リリィを見るとレインは目をそらしたが、そらした先にいたユリスと目が合い、気まずそうな顔をする。そして意を決したように深呼吸すると、口を開いた。

「……リリィちゃん、あの時、こいつに言われたことを完全には否定できなかった。でも、これだけはわかってほしいんだ。僕はリリィちゃんのことが大好きだった。いつの間にか形が変わって歪んでしまったけど、でも、本当に大好きだったんだよ」

 今度はまっすぐにリリィを見つめるレイン。リリィもレインを見つめ、ふわっと優しく微笑んだ。

「うん、わかってる。レインくんのしたことは絶対に許されることじゃない。けど、伝えたいことはちゃんとわかったし、伝わったから」

 リリィにそう言われ、レインはホッとしたように表情を崩す。そしてユリスを見て格子越しに深々と頭を下げた。

「僕じゃリリィちゃんを幸せにできない。僕が君にこんなこと言う権利がないのはわかってる。でも、どうかリリィちゃんを幸せにしてあげてほしい」

 頭を下げたままそう言うレインの声は心なしか震えている。そんなレインに対して、ユリスははっきりと言った。

「お前に言われなくなって俺はリリィを絶対に幸せにする。だから心配しなくていいよ」

 ユリスの言葉を聞いたレインの肩は震え、頭を下げたままのレインから水滴が地面にポタリ、ポタリと落ちていた。
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