移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
「ようやく二人きりでゆっくりできる」

 全てが解決し、ユリスとリリィには今回の件もあって一週間の休暇が与えられた。以前は三日の休暇のはずだったが、さらに延びたことで二人とものんびりと日々を過ごそうとしていた。

 今は部屋でユリスがリリィの背後から抱きついた状態になっている。

「どこかに行きたいなとも思いましたけど、とりあえずはちょっとゆっくりしたいですよね」
「そうだね。こうしてリリィが無事でいてくれることだし、リリィ不足をちゃんと補いたい」

 ユリスはぎゅーっとリリィを後ろから抱きしめ、顔をリリィの肩に埋める。
 何しろ、事件が解決してからも事情聴取を受けたり、現場検証に立ちあったり、研究科として魔法省へ提出するための報告書を作成したりとお互いに忙しい日々を過ごしていたのだ。

「ユリスさんたちのおかげです。本当にありがとうございました」

 リリィがそう言うと、ユリスは肩に顔を埋めたまま、ん、と呟いた。

「ユリスさんも無事でよかったです。私のせいでもしもユリスさんの身に何かあったらと思うと苦しくて……」

 紅い雫の件も、レインによる誘拐事件も、どちらもリリィが関係している。リリィにしてみれば自分のせいで皆を巻き込んでしまったという思いが強い。
 しかも最愛のユリスを危険に晒してしまったのだ。
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