移動初日の歓迎会で記憶を失い朝目が覚めたら女嫌いで有名な先輩が隣で寝ていました
 リリィの部屋が荒らされた翌日。研究棟の第一部門でリリィは部門長であるエデンにことの次第を説明していた。

「とにかく無事で良かった。現場検証はもう済んだのか」
「はい、さきほど終わりました。詳しいことは後日改めて説明されるそうで、その際には部門長にも同席してほしいと」
「わかった、俺も話を聞こう。大変だったな」

 静かに、だが労わるような口調にリリィは思わず胸が熱くなる。異動してきて間もないうちからこんな騒ぎになったのに、迷惑そうに扱うどころか優しく気遣ってくれる。ここの人たちは本当にいい人たちばかりだ。

「そういえばユリスが一緒だったそうだな。ユリスだったら安全だろう。あいつは研究課の中でも数少ない上級魔法の使い手だ。何かあっても必ず君を守ってくれるはずだ」

(ユリスさんてそんなにすごい人だったんだ)

 いつも真顔で何を考えているかわからず、女嫌いだということしか情報のなかったユリスだが、実はかなりの実力者らしい。何があっても守ってくれるという言葉がとても心強く思えてリリィは少しホッとした。 

「そういえばそのユリスはどこに行ったんだ?」



 リリィがエデンと話をしているその時、ユリスは第二部門の研究室に来ていた。

「すみません、ロベリオさんいますか」
「お、ユリス、お前がここに来るなんて一体どうした」

 ユリスの顔を見てロベリオはさも珍しいものを見たという顔をしている。

「ちょっと顔貸してください」

 ユリスはいつもと同じ真顔だがその中にいい知れぬ気迫を感じて、ロベリオは静かに席を立ちユリスを人普段が滅多に立ち入らない倉庫に連れて行った。

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